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88 自画像

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かに飛び散る。水をかけられると同時に管で排出される。時々鋭い痛みがする。僕は太ももをぎゅっとつねる。歯医者は苦手だ。気づくと、医者は溶接用のマスクをしていた。口の中の一部を合金に取り換えるとのこと、切り開かれ、ドリルで穴をあける。切粉が口の中ではねていた。続いて黄色と緑のコードが口の中に放り込まれる。先端がとがっていて、チクチクといたい。ビニールの感触がとてつもない異物感を感じさせる。吐き出してしまいたいけれど、そうする自由は僕にはなかった。医者はハンダごてを手にしている。棒の先端から白い煙が出ている。顔に近づいてくる。近づいてくるにつれ、肌に触れる空気の温度が上がっていくのを確かに感じたが、棒が口の中に入ったころには不思議と熱さを感じなかった。麻酔が効いているのだろうか、それとも、もう僕は機械の体になってしまったのだろうか。噂で聞いたことがある。機械化された人間は痛みを感じなくなるらしい。痛みを感じないから、自然と身体の扱いが雑になり、機械の体がいかに生身の体よりも丈夫にできているとは言え、細かな故障を頻発するというような事例がこのごろ増えているとのことだ。口の中で特殊ねじを締める音がカチカチ、カチカチとする。そしてまたピッ……ピッ……ピッ……ピッ……という電子音。どうやら通電を確認しているらしかった。医者が席をはなれた隙を見計らって、僕は舌を使って問題の個所を探ってみる。金属の塊があった。ひやりと冷たく、表面は不気味なくらいツルツルしていた。そこからコードが2本出ている。先ほどの黄色と緑のコードだろう。歯から飛び出て歯茎の中に埋まっていた。医者が戻ってくる。こんどはプラスティックの透明カバーだ。なるほど、まだ、仕上げのカバーをしていなかったのだなと思った。また、紫色の光をあてられた。口から鼻に向けて接着剤のような匂いが通り過ぎていく。はい、口をゆすいで、と言われる。顔の右半分が重たいような気がした。はい、これでしばらく様子を見ましょう、と言われた。席を立ち、待合室の席に座る。そこにはまた数人の患者がいる。みんな適当に互いに距離をあけ、椅子に座り、携帯をいじる者もいれば、テレビを見ている者もいる。みんなマスクをしている。その下にあるのは生身の皮膚だろうか、それとも新素材の超合金だろうか。皮膚は皮膚だとしても、その中身はなんだろうか、もうだれも、自分自身、自分の体のどの部分がもともとのもので、どこが人工的な素材のものなのかわかっていないんじゃないかなという気さえする。名前が呼ばれ、会計をすませる。1440 円だった。あれだけの作業量にしては、安すぎるように感じる。きっと足りない分は政府が負担しているのだろう。かなり巨額の予算が割り与えられているようだ。人間の体がそっくり機械に入れ替わるにはどのくらいの時間と手間がかかるのだろう。車に乗り込み、家に

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画材:キャンバス、油彩
サイズ:410×318mm
※額縁は付属しません。

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