86 消防塔
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いる。それは評価というよりも鑑賞のような方法なのかもしれない。評価せずにただよく見るということ。だいたい売れそうな絵が売れていくわけだけれども、それに紛れ込むようにして売れなそうな絵もたまに売れていく、何かの間違いのように。売れなそうな絵が売れていくということが僕は何よりもうれしくて、それは、あぁ、好き勝手に描いていいんだ、という風に改めて思い直すことができるからだ。日々、でたらめに、適当に、まじめに描き続けてさえいれば、時々こんな風に買ってくれる人がいるらしい。よいものというのは狙って生まれるものではなくて、無数に作ったものの中にちらほらと偶発的に生まれるものだという意識がある。そして、そのよいものというのは人それぞれで、ある人にとってはこれがよくて別のある人にとってはまた別のものがよかったりする訳だから、僕に大切なのは何か定まった何かに向かって製作するというよりもとにかく数を作るということなんだと思う。絵の値段が安すぎるといわれた。けれど僕はそうは思わない。確かに相場のようなものと比べたらだいぶ安いのかもしれないけれど、僕の感覚ではそんなに安いとも思わない。もし仮に、絵がどんどん売れるようになったとしても、今のような絵は、一枚数千円で売っていくと思う。とにかく僕は枚数を描けるので、その値段でどうにかなってしまう。もちろんそのすべてが売れるわけではないけれど、自分で選別したり、自分が納得できるものにするのにかかる負担がないので、この方が製作を続けていくことができる。1枚の絵にじっくり向き合って、それなりの値段で売るというスタイルの人は結構すごいことをやっているなと尊敬する。まぁ、それも人それぞれだ。絵を梱包し、お手紙を書いていると、その途中に絵がまた1枚売れた。同じようにうれしい。夜、また2人買ってくれた。今度は大学の時の同級生だ。結局、1日で12枚売れたらしい。本当にありがたい。発送を終え、昼寝をして、起きて、歯医者に行った。待合室には患者が4人。くだらないテレビをやっている。本を持ってきてよかった。この間きた時にはそのテレビを見るしかなくてしんどかった。名前が呼ばれる。僕の番が来た。まずレントゲンを撮りたいというので小部屋に案内される。窓のない3畳ほどの部屋。普通の蛍光灯の照明なはずなのだけれど、その部屋の明かりはものすごく黄緑色がかっているような感じがした。白いアームの先に黒いレンズのついた機械の横の黒い小さな革張り椅子に座らされる。原始のロボットの胴体パーツのようなエプロンを肩から掛けられる。口を開き、硬い何かを咥えさせられる。係りの人は出ていき、その部屋で僕は一人だった。すごく一人になった気がした。外の世界と隔てられたところへ来たみたいだった。音はなく、他人の気配もなかったが、黒いレンズが僕の顎をじっと見つめている。時間が止まったよ
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画材:紙、アクリルガッシュ
サイズ:272×192mm
※額縁は付属しません。
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