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76 姫栗の坂

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んだろう。だしと砂糖、しょうゆの甘い香りがする。もうすでにお稲荷さんの香りだ。タイマーをかけ、本を読みながら待つ。匂いが漂ってくる。我慢できなくて煮汁を少しだけなめる。お稲荷さんだ。そこにはお稲荷さんがいる。米が炊けた。本当は少し硬めに炊かないといけないらしかったのだけれど、うっかり普通に炊いてしまう。もしかしたら、いつもよりも少しだけ柔らかいくらいだったかもしれない。次につくる時には気をつけないと……。ボウルにアツアツのまま取り出し、酢と砂糖を混ぜたものをかける。すぐに扇ぎながらさささっと混ぜて酢飯の完成。さらしをかけて粗熱が取れるのを待つ。そうこうするうちに揚げの方もいい感じだ。煮汁がだいぶなくなっている。火を止め、こちらも冷めるのを待つ。待っているあいだに、畑に行って水をやる。人参がだいぶ大きくなっている。空心菜ももう少しでいい感じになる。去年のサトイモが変なところから芽を出しているのに気が付いた。揚げを対角線で切り、三角形にして、破かないように気を付けながら内側と外側をひっくり返す。何枚か破けたけど無事に全部開けた。酢飯の方もいい感じ。ゆずの果汁をすこしだけ入れ、揚げの煮汁を手に付けて、米をつかみ、一口サイズに丸める。揚げに詰め込む。甘い香り、これは間違いなくおいしい。脳に直接届く感じだ。全部詰めて完成。破れてしまったのをひとつ味見。おいしい。大好きなやつだ。翌日の昼ごはんに出先で食べようとタッパーに詰めた。さて、そろそろ出かける準備をしないといけない。昼ごはんには昨日のお稲荷さんが待っている。ちょうど配達の仕事を終えた頃、雨が降り始めた。短い時間さっと降り、そしてぴたりとすぐに止んだ。ずっと運転して、疲れたので家に帰ってからしばらく昼寝をする。配達の途中で、隣に座っているМが「あ、ビワがなってる」というので、見ると、本当だった。僕らの家の畑なのだけれど、家から遠いので、草刈りしかしていない畑の隅っこに大きなビワの木があった。橙色の実がたくさんなっている。どうして去年気が付かなかったんだろう。昼寝を終えて雨もやんで、日差しが戻っていたので、ビワをもぎに行こうということになった。バケツ片手に畑まで歩いていく。遠いといっても全然歩ける距離だ。散歩がてら歩いていく。それはこの前に小学校の角のどころで見たものよりもだいぶ大きいビワの木だった。樹高はどのくらいだろう、てっぺんまででいうと、5メートルくらいあるだろうか。いやそんなにはないかもしれない。でも大きい。よく熟した橙色のビワの実が一箇所につき5,6個まとまって、それが木の全体に明かりを灯すように点々と付いていた。手の届くところの実をもいで食べる。甘い。熟していて、実を取るときに触れた他の実がひとつ地面に落ちていった。食べた実からは大きな種が出てきた。この間のビワの種とは全然大きさが違う。たぶん体積的に考える

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画材:紙、アクリルガッシュ
サイズ:192×272mm
※額縁は付属しません。

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