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33 棚田の風景

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の人の家に勝手に入っていったら、怒られるんじゃないかと思った。立ち止まり、どうしようかと考えていると、猫はぴたと歩くのをやめ、僕の方を向いて、みゃあと鳴いた。すぐに向き追って2、3歩進んだかと思うと、もう一度、立ち止まり、そしてまた、みゃあ、と鳴いた。「ついておいで、大丈夫だから」そんな風にその猫は言っているような気がした。ざ、ざ、ざ、と庭に敷かれた砂利の上を歩く。家の周りは木々に囲まれている。お山の真ん中にぽっかりと穴みたいに空き地ができてその中に家があるみたいだった。家の前にはだんだん畑が広がっている。けど今は何も作っていないみたいだった。背丈の長くなった草が風に揺れている。静かだった。こんなに静かな場所には行ったことがないような気がした。木に囲まれ、その中に立っている自分はこの世に一人きりなんじゃないか、という感じさえした。もしかしたら、この森に囲まれた家の回りはなにもないのかもしれないそんな想像が頭の中で膨らむ。その空想の広がりを遮るように、また、みゃあ、と猫の鳴く声が聞こえた。「さぁ、早く、何しているの?」ぼくはまた、猫の後について、歩き始めようとすると、今度はまた別の声がした。今度は人間の声だった。「あら、こんにちは、どうしたの?」僕はどきっとして振り返る。心臓を針でちくっと突然刺されたのかと思った。肩がすくみ、おなかが引っ込んだ気がした。振り返るとそこには女の人がいた。僕のお母さんよりはだいぶん年上みたいだ。「えっと、あの。」僕は自分がどうしてここにいるのかわからなかった。ここがどこなのかもよくわからず「猫が」という言葉だけがろうじて口からでてきた。猫はどこかへ行ってしまっていた。まったく無責任な猫だと思う。とにかくまぁ、僕とマリとが初めて会ったのはこんな風にしてだった―――。なんか物語が描けるかもしれない。今は毎日日記を書いている日々だけれど、いつかこんな物語を書くかもしれない。書いてみたいと思う。その他にも気になる一言というか、キーワードみたいなのがぽつぽつと目に残ったので、なんか、今くらいの精度の翻訳機能は創造の力を喚起する何かがあるのかもしれない。自分の書いたものだけど、自分の書いたものとはちがう現れ方をするというのは結構面白い体験だ。書いていることの根本は、自分の中にあるものなのに違う言葉として目の前に現れているという感覚。すべては自分が書いた文章なのだけれど、翻訳を2回通すことで、なんかもう他人の文章として読める。僕が何かものを作ろうという気になるとき、それには何か手本となるような何かがたいていの場合に存在する。これみたいなの作りたいとか、これをまねて作ってみようとか、そういうことばかりしている。それが目の前の風景だったり、机の上のものだったり、誰かの文章だったりするわけだけど、今回の翻訳2回によって生まれた文章も、結構そういう何かと

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画材:紙、アクリルガッシュ
サイズ:192×272mm
※額縁は付属しません。

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