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たまごコッペとお祭りと

 しとしと雨のふる朝、きのう焼いたパンにたまごを挟んで食べる。身支度をし、散っていく桜を横目に車を走らせ近所の神社へと向かう。今日は祭だ。 着くと道路脇に数台の軽トラックが並んでいる。もうすでに何人かは集まってるらしい。 僕らも準備を手伝おうと思い、玉串に紙垂を縛るの
を教えてもらったのだけれど、いまいち上手にできず大して役には立たない。そうこうしているうちに神事がはじまる。 掛軸が吊るされた格子戸の向こうに本殿が透けて見える。そこに向けて、海のもの、山のもの、野菜や果物、酒や米などが供えられている。しん、と部屋は静まる。雨の音、神官さんの声、そしてそこにいる十数名の呼吸音だけがする。

 「あれ、そういえば」その静けさを破るように神官さんがつぶやいた。

 「ロウソクがない。おーい誰か、探してきて。」
 「うーん、ないね」と誰となく答える。
 「ない?」
 「ないよ」
 「そこの赤い鞄にないかな 」
 「お、あったあった。マッチもある」
 「でも燭台がない」
 「燭台か」
 「あ、おれ、燭台みたぞ。集会所にあった。」
 「ほうか、じゃあ持ってくるの忘れたな。」

 静寂はもどり、神事は続く。
 「玉串が足らんな。」
 「何枚?」
 「3枚。」
 「ほうか、じゃあもう一回お祓いして使うよ 」
 「あ、2枚で良さそう」
 「2枚ね」
 「いや、3枚かな?」
 「もういいよ、5枚ぐらいやっとこう」
 そして神事は続く。

 訪れる静寂。祝詞が読まれ、神事は終わる。 昨年も今年も直会はなく、各自お弁当をもらって家で食べる形式になっている。本当だったらみんなで飲み食いして、ワイワイガヤガヤ楽しむらしいのだけれど、残念ながら僕らはそれに参加したことはない。 余ったお餅と古代米をたくさん頂き、家に帰る。着くと、玄関先にお隣さんの姿があった。 「はい、少しだけど、これ。」と言って紙包みを渡された。 ものすごく美味しい、栗入り赤飯だった。お弁当と一緒に食べ、すこし昼寝をして、起きてから器を幾つか挽いた。 
 そんな春の1日。


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画材:紙、アクリルガッシュ
サイズ:272×192mm
※額縁は付属しません。

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